《風と雪がそよぐ場所 - 君が生きる理由 第八章》
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穏やかな時間の中、やっと取り戻せた未来との関係。
以前ほど近いわけでもない。ぎこちなさを感じながらも、確かにその距離は縮まっていた。
最初は傷に触れるような空気を纏いながら、徐々にそれは姿を隠して。
俺達は笑っていた。どちらからでもない、お互い一緒に笑っていた。
何気ない会話に俺の心は躍り、普段より少し大きくなっていた声。
それは未来も同じで。
俺達は、またここから始められる。
そんなことを思った。その矢先の出来事。
「そういえば拓哉君とは話をした?」
「……いや。まだ、だな」
戸惑ってしまったのは何故なんだろう。
ここに来たからには、拓哉と話をすることは避けられないことのはず。
それでも授業中を選んだのは先に未来と二人で話したかったから。
そう自分では思っていたけれど本当のところはよく分からない。
「拓哉君も生人と話をしたがってたんだよ」
「そうか、俺も話したいな」
「そうなんだ。そう言えば、拓哉君ってばこの間ね――」
「ああ」
未来が拓哉との思い出を嬉しそうに語りだす。
その笑顔はさっきまでと全く変わりはない。
変わったのは俺の心の中。
けれどそれは前のような怒りとも、悲しみとも違った。
気がつけばさっきまであった戸惑いすら感じられないほど無くなっていた。
ただ真っ白になってさっきから続く未来の話に相槌を返していた。
「それでね、――って言うから私ね――」
「……ああ」
「でね、一緒に――」
「……」
けれど、それも何時しかしなくなって。
俺はただ嬉しそうに話し続ける未来を見ていた。
本当に幸せそうだと、そう思った。
それが嬉しいのか悲しいのかすら分からないことに寂しさは感じた。
「……生人、聞いてる?」
「聞いてるよ」
真っ白な意識の中で、向けられた笑顔に笑顔で返した――つもりだった。
正直、笑えているか自信が無かった。
頬がひきつった感覚はあったけれど、その結果作られた表情が笑顔なのかそれとも違うのか。
「それならいいけど、何か困ったこととかあったらなんでも言ってね。私にできることなら何でもするって約束するよ」
「そんな心配するなら早く学校に戻ってこい」
「あは、それもそうだね」
未来はまた楽しそうに笑って、また次の話題に移る。
それもやっぱり拓哉の話題だったのは少し残念だったけど、どうやら俺は笑えているらしい。
それが分かってほっと胸を撫で下ろす。
自分ではやっぱり分からないけれど、お前が安心できるぐらい今の俺は笑えているってことが分かったから。
だから俺はもう逃げないでいられると思う。
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